アスペクト

つれづれ雑記 角田光代

作家・角田光代さんの日常を綴る日記が、アスペクトONLINEにて連載開始です!怒涛のような締め切りの数々や大好きな肉のこと。見たこと、聞いたこと、会った人、出かけていった旅のこと。角田さんの毎日のつれづれはここでしか、読めません!!

2006年12月1日〜12月27日

日
12月1日
金曜日

 6日や8日が締め切りだと思っていた原稿の、本当の 締め切りが4日であると、さまざまなメールから知り、頭のなかのまだら模様がぐるぐるまわりはじめ、マーブル模様になる。先だってこの日記に「ここ5年で いちばんつらい」と書いたが、撤回。物書き家業16年でいちばんつらいでやんす。何が起こっているのでせう。
 午後、渋谷ですばやくごはんを食べて、パルコにいき、松尾たいこさんとトークショー。「Presents」という本のなかの一編が映画になったので、そ の映画の前のトークである。いつもながら、つまらないことをしゃべってすみません。トーク後、映画を観ることになっていたのだが、地獄釜のなかなので、急 いで帰って仕事。締め切りひとつ。

日
12月2日
土曜日

 昼過ぎに家を出て新宿に。今日は、恒例の高齢温泉会。6月にいったときに、もうすでに同じ旅館の予約をいれてあったのだ。というわけで今回も箱根。
 箱根が近づくと、「箱根っていいなあー」といつも思う。私は本当に箱根が好きだ。伊豆も好きだけど。この、伊豆箱根の好きさ具合は、私のなかで、豚羊みたいな感じ。へんなたとえだな。
 湯本駅から旅館まで、歩いてすぐなのだが、旅館まであと十歩、というところで、高齢者メンバーが「あっ、こんなところに蕎麦屋がある!」。  そこに蕎麦屋がそこにあるのは、もうみんな知っているのである。わざと言っているのである。旅館まであと十歩なのに蕎麦を食うのか、という少々の論議ののち、「まあ、おやつの時間だし」とかわいい主張をし、高齢者たちは蕎麦屋に入っていく。やむなく私たちも入る。
 しかしながら、私はおやつの時間の蕎麦で、生まれてはじめて、蕎麦&日本酒のおいしさに開眼した。日本酒ってこんなにうまかったのかー、こんなに蕎麦と合うのかー、と感動した。
  このようなことは八年ほど前にもあって、そのときには肉&赤ワインだった。それまではなんとなく決まりごとのように、肉には赤ワインを飲んでいて、おいし いとかおいしくないとか、そういうことは考えたこともなかった。それが八年前のある日、どこかの河原でバーベキューをして、安肉に安ワインだったのだが、 その組み合わせの妙に「ぎょぎょっ」となったのであった。以来、私はワインをたいへん好んで飲むようになった。
 ということは、これからは日本酒かな。
 温泉に入って6時半に食事。5時にひとり、7時にひとり、8時にひとり、10時過ぎに重鎮ひとりがあわられてその都度合流し、最後はいつものごとく部屋宴会。歩く文学史辞典のような人々から、たいそうおもしろい話を次々と聞き、私は先に寝た。妖怪たちは寝ないからね。

日
12月3日
日曜日

 この温泉会の人々はとにかく観光嫌いなのだが、高齢化にともなって、歩くことすら嫌うようになってきた。チェックアウトの11時、旅館のロビーに集まって コーヒーを飲み、「このあとどこにいくか」という会議がはじまるのだが、これがもう、紛糾紛糾。熱海いこうっつっても「嫌だなあー」、じゃあ真鶴いこうっ つっても「真鶴って何があったっけー」、じゃ箱根の美術館に、つっても「見たくないー」、それなら登山鉄道に乗って、つっても「それはどうかなー」、で、 なかなか決まらない。しかし「真鶴に蕎麦屋があったなー」「じゃあ鎌倉にいって寿司……」「そんなら横浜にいって上海蟹」と、食うことならば話はどこまで も広がるのだが。
 結局6月と同じ、小田原にいくことに。タクシーに便乗して小田原の有名な食堂へ。ちょっと、一歩も歩いていないよ……。ともあれこの食堂の建物は、もの すごくかっこよかった。食堂で早々と熱燗、刺身を食べ、「このあとどうしよう」でまた11時と同じ論議がくり返され、「小田原城……」とだれかが言いだ し、あ、また小田原城にのぼるのかな、と思いかけたとき、「……の見える蕎麦屋があったなあ」。ちょっと! 今飲んで食べてんのに、なぜよその店で飲んで 食べる計画をたてるかなあ。
 おそろしいことに我々はその食堂を出、30歩ほど歩いて本当に小田原城わきの蕎麦屋に直行したのである。おかあさーんこわいよー。と、心のなかで叫ぶ。
 でも蕎麦はするすると食べられるから不思議だ。昨日とまったく同じ、熱燗と蕎麦でだらだらし、二時過ぎに蕎麦屋を出る。そのまま商店街を歩き(やっと歩 いてくれた)、商店街で猿の芸を見て、おみやげ買って、お茶飲んで、帰ることになった。今日一日、晴れているのか曇っているのか、わからなかった。小田原 の駅ビルから遠く海が見え、それがたいそう美しかった。

日
12月4日
月曜日

 午前中ブランチという番組の取材。書いても書いても終わらず、ああ箱根で忘れていたけど地獄の釜のなかだったなあとぼんやり思い出す。年、越せるのか。
 夜は小田原で買った金目を焼いたのだが、この金目が人の頭の大きさくらいのでかさだった。うまかった。締め切りふたつ。夜中、高齢温泉の仲間から、すばらしい内容のお知らせメールが入り、それがうれしくてひとりで小躍りする。締め切りふたつ。

日
12月5日
火曜日

 午前中に仕事場を出て一日じゅう外仕事。帰りのタクシーで、運転手さんが、地方からきた新米運転手が、高速の相模原出口がわからず、客を静岡まで連れていった話をしてくれた。おかしいが、せつない話であった。締め切りひとつ。

日
12月6日
水曜日

 午前中、ちらりと寒気がする。やばいやばい。
 夜、K社と焼き肉忘年会。うんとおなかを空かせていき、焼き肉をがばがば食べたのだが、やはり風邪なのか、急激に酔いがまわり、二軒目でえらいことになった。今風邪ひいたらたいへんなことになるんだけどな〜。
 風邪のひきはじめに薬を飲むと、風邪の芽みたいなものだけ残って、表面だけなおり、その芽がいつまでもくすぶりつづけていてよくない(だから飲まないほうがいい)、というのが私の持論なのですが、いかがでしょうか。締め切りひとつ。

日
12月7日
木曜日

 たしかに風邪である。熱があまりあがらず、頭が 痛く、体がだるく、胃がむかむかと痛い、と、人に聞いていた「今年の風邪」のまんまである。風邪のもとを大事に膝にのせ、やわらかく撫でまわし、あのね、 今、風邪をひくとものすごおくたいへんなことになるの、だからあと十日ばかしおとなしくしていてちょうだいね、とやさしく話しかける。聞いてくれるだろう か。
 午後、絶不調のまま、木場の東京都現代美術館にいき、大竹伸朗「全景」展を見る。膨大な量。量と質に圧倒される。風邪のせいもあって、途中から、頭がぐるんぐるんし出す。
 いったん仕事場に帰り、もうだめだ、家に帰って少しばかり寝よう、と思ったら、今日の締め切りがまだひとつあったことを思いだし、泣く泣く書く。いった ん家に帰り、二十分だけ横になり、吉祥寺シアターに向かう。青年団の「ソウル市民1919」を観、そのあと平田オリザさんとトークショー。平田さんのお芝 居は、いつも絶妙なさじ加減で描かれていて、それがつまるところ、この人の脚本の気品なんだと思った。締め切りふたつ。

日
12月8日
金曜日

 昼ごはんを食べながら、今日夕方しゃべるべきことをまとめる。二時半に仕事場を出て、三時半にプレスセンタービルへ。今日は開高健記念館主催の紅茶の会及びボジョレー・ヌーボーの会があり、私はそこで、70分くらい話すのである。
 こういう会があることをまったく知らなかった。私ごときが話すことはまーったくもってないのであるが、そしてふだんならたいていはお断りしてしまうが(話し下手)、これはSさんという尊敬する大編集者じきじきに声をかけられたので、びびって承諾してしまったのだった。
 八年前くらい、開高健の本を読んでたいそう心を動かされ、そうして「真昼の花」という小説を書いたのだが、それを載せてくれた雑誌の当時の編集長がそのSさん、という薄い開高つながりもある(と、私が一方的に思っているだけなのだが)。
  会場には、ばーんとでかい開高健のパネルがあって、それを前に話すことを考えたら、緊張と感動とで泣きそうになった。お客さんは多くはないが、みな開高健 の関係者らしく、それもまた緊張度を強いてくる。もうね、本当にね、話すことなんかないのですよ。私が関係者の人々に質問したいくらいですよ。会がはじま りやむなく話しはじめるが、もう、「私は開高健が好き。好き。好きなんです」と言い続けるしかないよなー。がんばってそう言い続けても一時間しかもたな かった。
 その後、ボジョレー・ヌーボーの会になり、ワインを飲んで、馬頭琴の演奏を聴いて、S社のSさんIさんKさんと抜けだし、有楽町の飲み屋にいく。この飲み屋がすごかった。店内、サラリーマンだらけ。圧巻である。植木等の映画のようであったよ。
 体調絶不調なので、烏龍茶を飲み、そうそうに帰る。

日
12月9日
土曜日

 母の三回忌で横浜のはじっこへ。あいにくの雨で、寒かった。帰りの道すがら、猛烈に焼きそばが食べたくなり、お好み焼き屋にいってもんじゃと焼きそばを食べる。
 もんじゃは、ときどき作れない人がいますね。私は得意ですよ。土手づくりはみごとなものだと自分で思う。もう、苦手な人見ると作ってあげたくなっちゃうよ。

日
12月10日
日曜日

 体調絶不調。肉をいただいたので、すき焼きにする。腹から裂けそうなくらい満腹になり、倒れるように横になったら爆睡し、起きたらさらに体調絶不調。鋼の衣を着ているように体が重く、十時半に寝ちゃった。

日
12月11日
月曜日

 一時に東京都現代美術館で大竹さんと対談。休館日で、ひっそりとしている。ひっそりとしたなかに作品があり、なんかそれが、すごくよかった。その後渋谷に 移動して、横木安良夫さんの写真展でトークショー。体調絶不調であまりうまく話せなかった(体調絶好調でもうまく話せないが)。
 この写真集、「あの日の彼、あの日の彼女」をはじめて見たとき、私は自分の父と母が、まだ父と母でなかったころのことを思い、すると写真におさめられた 若者たちそれぞれが、父でも母でもなかっただれかに見え、今ここに、老いるなどと思いもせず存在する「私」と等しく、彼らも「私」であったのだなと思い至 り、そんなことに感動とも感慨ともちがう、共存の実感というか、不思議な気分を感じたのだが、そういうことは、うまく言葉にできなかった。情けない。締め 切りふたつ。

日
12月12日
火曜日

 よっしゃ光が見えたデ(開高健風)! この、長 く、つらく、世をうらみ、性格をますます悪くして、黒目をどんどんちいさくしていた地獄釜の日々の終焉が、つい先ほど、締め切り日確認をしていたところ、 ちらーりと、ほんとうにちらーりとだが、かいま見えた。体調は相変わらず絶不調だが、光が見えたので、少しばかり気持ちがかろやかに。どうぞ錯覚とか気の せいとか捕らぬ狸の皮算用とかではありませんように。夕方はFM東京にいく。お堀を見たら、先月のマラソンが思い出され、うっかり涙ぐみそうになる。なん て大げさな人間なんだろう。締め切り二つ。

日
12月13日
水曜日

 よっしゃ光はまだ消えていないデ(しつこいですね)! 来年のことは、もうこの際、来年考えることにしよう。体調まだ不調、お弁当つきの会議を休む。ずっ と以前に取り寄せておいたきりたんぽ鍋を食べたら、これがおいしかった。茸が食べられなかった私は、秋田取材のきりたんぽ鍋で舞茸の存在意義に気づいたこ とを思いだした。それは九年前。厚着をしてはやく寝る。締め切りひとつ。

日
12月14日
木曜日

 自分で引き受けたのが悪いのだが、来年の執筆以 外の仕事と、自分の執筆の予定とが合わなくなり、執筆のほうをずらす結果になって、自分でも驚くほど落ちこみ、自身にむかっ腹が立ち、この気持ちを忘れて はいかん、と思い、新年の書き初めみたいに紙にその落ちこみと腹立ちを書き殴り、壁に貼る(すぐ忘れるからさ)。あんまり先のこと言われるとわかんなく なっちゃうんだよな。明日のことくらいしか入らない頭だから。
 11時に神保町の待ち合わせの店にいくと、まだ閉まっている。やってきたHさんと近くの喫茶店で打ち合わせ。気がつかないようなところにある喫茶店なのに、続けざまに人がやってきて、神保町だなあと思う。私の神保町イメージはコーヒーの町。
 打ち合わせ後、待ち合わせた店にランチを食べにいく。ランチョンというビアホールなのだが、私、ここにずっときてみたかったんだ。Hさんに、吉田健一の話など聞きながら、ビールを飲みハヤシライスを食べる。塩タンというものがおいしかった。
 その後移動して石田衣良さんちへ。今日は石田さんの仕事部屋で対談がある(たぶん、NHKBsで、来年2月14日放映)。テーマは恋愛小説。石田さんの 仕事部屋、なんだかもんのすごかった。エアロビクス教室ができそうな広さだった。打ち合わせもなくはじまり、「ひええ」と思っていたが、石田さんは慣れて いるので、進行役もしてくださった。締め切り二つ。

日
12月15日
金曜日

 午前中打ち合わせ一件、昼に牛タンを食 べ、午後S社にいって取材、その後帝国ホテルに移動して野間文芸賞の授賞式。野間新人賞のほうは、今年は選評を言う係ではないので気が楽だった。黒井さん の二次会にいきお祝いを述べ(黒井千次さんは私が海燕でデビューしたときの選考委員であり、なおかつそのときほとんど唯一推してくれたという、まことの恩 人)、中原さんの二次会にいきお祝いを述べ、そのまま新宿に飲みにいって三時過ぎ帰宅。お祝いの場所はいいですな。締め切りよっつ。

日
12月16日
土曜日

 昼まで寝、起きたらしんどくて二度寝し、夕方になって隣町にカレンダー類を買いにいく。来年のカレンダーなんて気が早いようだが、1月の打ち合わせ日時がちらほらと出ているので、こわくなって買ったのだ。書かないと忘れるから。師走だなあ。
 帰り、久しぶりに隣町から歩き、歩いている最中に急激に腹が減り、べつのものを食べる予定だったのが焼き肉に。最近、焼き肉でごはんを食べる方法を覚えた。

日
12月17日
日曜日

 町をぐるりと散歩する。ちいさな店があいかわらずたくさんあるなあ、と感心する。夜、本を見て、里芋のグラタンというものを作ってみたら、これがまあ、おいしかったことである。具が里芋だけ、というところがうまさの秘訣だと思う。
 沖縄で食べた田芋揚げ、里芋で作れないかなあ。この代用料理の調理法を知っている人がいたら教えてください。早寝。

日
12月18日
月曜日

 お昼休み、刷り上がった年賀状をとりにいった帰り、いつも行列のできているラーメン屋の前を通ったら、空いていたので、突発的にラーメンを食べた。この ラーメン屋はメニュウに「ラーメン」と「ワンタン」があるところが、とてもいいと思う。ワンタン麺はよく見るが、ワンタンだけ、というのは台湾でしか見た ことない。
 私、子どものころ、ワンタンが好きでさあー。その当時、祖母んちの近所にワンタンのある中華屋があって、祖母んちで「何食べる」という話になると、ワン タンと主張するのだけれど、いかんせん子どもだから、ワンタンとタンメンがごっちゃになって、ワンタン頼んだつもりが野菜のいっぱいのった麺が出てきて、 がっかりすることが多かった。あ、ワンタン食べればよかったな、と、書いていて思った。締め切りふたつ(なんでもう年末なのに締め切りが途切れないんだろ う……)。

日
12月19日
火曜日

 ああ、先だって見えた光がどんどん大きさを増していることよ! もう出口が見えたことよ! これでなんとか年が越せる〜〜〜。
 と、思ったところ、喉がびがびがに痛くなった。また風邪? もういやだよーん。こわいので早寝。締め切りひとつ。

日
12月20日
水曜日

 午前中打ち合わせ一件。午後に近所で対談をする。
  今日は、ずっと待ち遠しく思っていた忘年会があるので、そこでばくばく食らうぞ、という決意のもと、昼には軽く蕎麦を食べ、心身ともに忘年会に向けて準備 をしていたのだが、時間がたつにつれ、寒気と頭痛と喉痛と咳が。し、しかし今日はずううううっと楽しみにしていた忘年会、火鍋を囲む予定なので、火鍋でこ の風邪の予感を吹き飛ばそう、と、家を出て電車に乗ったものの、ふらふらしだし、こりゃやばい、こりゃあやばい、と新宿で途中下車して、泣く泣く帰る。か なしすぎる。
 帰って熱を計ったら37、7度だった。これは私には高熱の部類。すぐに寝る。うつらうつらしながら、数日前、風邪のモトを膝にのせてやさしく「活躍はあ と10日待ってくれ」と言い聞かせたことを思い出す。風邪のモトはどうやら言うことを聞いてくれたらしい。うれしいやらかなしいやら。締め切り三つ。

日
12月21日
木曜日

 午前中打ち合わせ一件を終え、昼ごはんを食べて、お医者さんにいって風邪薬をもらう。しんどすぎて早引け、四時に帰って寝る。しかしもう、これで年内ほとんどの締め切りを終えたので、少し安心。締め切りひとつ。

日
12月22日
金曜日

 朝早くに家を出て試写会を見にいく。飛んで帰って所用。昨日もらった薬のおかげでだいぶよくなった。やっぱ医者すごいな。
 長芋一本買ったので、毎日のようにとろろを食べている。

日
12月23日
土曜日

 今日は休日なのか。新宿にいったら、新年の初詣並みに混んでいた。でもなんとなく、クリスマスのにぎわいっていうより、もはや大晦日のにぎわいのようだった。近場に戻って、魚の居酒屋で飲んで帰る。風邪、よくなりつつも、まだ芯が残っている感じなので、はやく寝た。

日
12月24日
日曜日

 走ろうと思ってはやく起きるも、鼻水・喉痛・関節痛なのでやめておく。近場の肉屋に肉を買いにいって、夜はそれを焼く。ケーキは食べず。あのー、風邪、長引きすぎる気がするんですけれど。

日
12月25日
月曜日

 メリークリスマス。ああ、今週でもう今年もおお よそ終わりであるか。いんやもう、鼻がつまって鼻がつまって。熱→喉痛→鼻水もしくは鼻づまり、になってくると、もう風邪もだいぶちっこいな。おそるるに 足らずだよな(と、言い聞かせる)。午前中に打ち合わせ一件、ジムにいってみるがだるだるで、三十分で撤退。
 夕方に仕事場を出、外苑前にいく。7分で着くはずの場所に、なぜか40分かけて到着し、松尾たいこさんの個展を見る。本当に息をのむほどすてきな絵ばか り。松尾さんってすごいなあ。松尾さんの絵って、遠くからちらりと見ただけで「あっ松尾さん!」ってすぐわかる。個展会場で「Presents」を五冊 買ってくださっている方を見かけ、感謝で息が止まりそうになる。
 そうして麻布方面に移動して、蟹忘年会。今年は体調絶不調で、ことごとく忘年できていないので、この忘年会だけは這ってでもいく、と決めていた。這わずともいけた。愛のあるユーモアに笑いまくり、気がついたら十時を過ぎていた。帰りは雨。
 締め切りふたつ。ははっ、もう終わったも同然であるよ(と、言い聞かせる)。

日
12月26日
火曜日

 昨日の蟹鍋の湯気を、意識的に大量に吸いこんだのがよかったのか、朝起きたら、このところ一日たりとも手を抜かなかった風邪野郎が、おとなしくなってい た。今日はほんの少しだけ文字を打ち、買いものにいって夜宴会の準備にいそしむ。恒例の地域の会の忘年会編を、今夜はこの仕事場でやるのである。まあここ も地域内だし。
 地域の会の新メンツひとりにお祝い事があるので、彼用に肉を買う。6時過ぎにだんだんと人が到着、乾杯乾杯。S社のRさんが、ワインとシャンパンにたいへん詳しく、お店のようにあれこれと説明を聞きながら飲んだ。ふだんよりおいしかった。十人で十本の酒を飲んだ。
 12時過ぎに外に出たら大雨。雷鳴る鳴る。夜なのに、空べかべか。

日
12月27日
水曜日

 ああ、やっと締め切り表の黒丸がすべて白丸に!!! 乗り切ったらしい!
 本当に、ほんとーーーーーーうにつらい二カ月であったことよ。地獄かと思ったらさらに底が抜けてまだ地獄があったべ、と毎日のように思うような日々でし た。そういやあ、失恋した若き日、こんな気分になったことがあったっけなあ。これほどつらいことはきっとないよな、と思っても、底が抜けてまた一段つらい ところへいく感じ。来年は心を入れ替えて地獄を避けよう。
 今日は来年のぶんの仕事を少しして、明日は仕事場の大掃除をして、仕事おさめとなる。締め切りひとつ。
 みなさん、どうぞよいお年をお迎えください。風邪ひかないように。長くてつらいからね。来年もよろしくお願いします。

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