アスペクト

つれづれ雑記 角田光代

作家・角田光代さんの日常を綴る日記が、アスペクトONLINEにて連載開始です!怒涛のような締め切りの数々や大好きな肉のこと。見たこと、聞いたこと、会った人、出かけていった旅のこと。角田さんの毎日のつれづれはここでしか、読めません!!

2008年1月7日〜1月31日

日
1月7日
月曜日

 あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
 年末に、私の出した年賀状がすでに「宛先不明」で戻ってきやがった。きっと何枚かは、年内に届いてしまったんだろう。恥ずかしいなあ。
 たいていの会社は今日が仕事はじめと想像するが、いつもより正月休みは長いのだろうか。私は4日が仕事はじめでした。私はたいがい、28日から3日までが正月休みだが、考えてみれば、まとまった期間休むのは正月のみだなー。と、5日に気づき、5日は深夜過ぎまで遊んだ。
 年末年始は判で押したように毎年同じことをして過ごし、おととい、やっぱり毎年いく神社にいって、毎年祈っているのと同じことを熱心に祈った。ところで、大晦日にいった神社も、この神社も、去年までと比べてがら空きだったのだが、何か日本人の信心関係に変化があったのだろうか。
 今日はB社の方々と新年会なので、夜になってから都心方面へ。18年ぶりくらいに、ある町を訪れる。まだ20代の若手編集者Tさんが教えてくれたふぐの店だが、ここがあまりにも渋く、Tさんがどうしても50代に見える。この店のふぐ、今まで食べたなかでいちばんおいしかった。おそるべし20代Tさん。たのしい新年会であった。たのしすぎて熱燗を飲みまくったが酔わなかった。

日
1月8日
火曜日

 仕事をし、ジムにいき、夜になってから外出。ニューヨークに住んでいる先輩が日本に帰国しているので、今日は学生のころよくいっていた店で集まるのである。先輩や後輩など十数人。在ニューヨークの先輩は大学を卒業してから写真をはじめ、ニューヨークにいって写真家になった。すごいことだ。ところで私は来月、仕事でニューヨーク(とシアトル)にいくのだが、ニューヨークは20年ぶりくらい。ニューヨークにいった当時の私は、「あんなとこ、もう二度と死んでもいきたくない」と言っていたと、その先輩に指摘された。私はあんまり覚えていないのだが。
 先輩によれば、ニューヨークは昔とぜんぜんちがくて、夜でもひとりで歩けるくらい安全な町なのだそうだ。納豆もすぐに買えるし韓国料理店が並ぶ一角もあるそうだ。今度いったら好きになるかなあ。でも仕事だしなあ。
 集まった人々はいろんな分野で活躍していて、でもほとんどが、学生時代とおんなじに芝居に関わっていて、私はそのことをなんというか、すげえなあ、と思うのだ。
 10時に帰ろうと思っていたが、気がつけば11時過ぎで、11時ならもう何時だっておんなじ、と、酔ったとき特有の思考回路になり、2時まで飲む。ひえええ。あわてて帰るが、まだ6人ほど残って飲んでいた。強者……。締め切りふたつ。

日
1月9日
水曜日

 午後にY新聞にいくため電車に乗ったところ、途中駅で人身事故のため止まってしまった。やむなくタクシーに乗り換えたら、渋滞。こういう日ってあるよなあ。でもなんとか時間には間に合った。取材を受けて、そのまままっすぐ帰る。
 正月が終わるとカレーを食べたくなるのは、子ども期に見たコマーシャルの洗脳だろうか。そんなわけでカレーにした。締め切りひとつ。

日
1月10日
木曜日

 午前中に仕事場を出て所用をすませ、新宿のチェーン店らしき韓国料理屋さんでスウンドュブ定食を食べたら、このスウンドュブが辛くないばかりか、豆腐とアサリ三個しか入っておらず、「そ、そんな!」と思った。せめて豚の切れっ端を一切れ……。そしてごはんがあまりにもおいしくなくてびっくりした。おいしくないものがふつうにあるとびっくりするなー。
 その後山の上ホテルに移動して、中島京子さんと対談。中島さんにお会いするのは久しぶり。中島さんの新刊がもうじき出るのだが、この新刊が、もう興奮でぶるぶるするくらいおもしろかったことである(「平成大家族」という集英社刊の小説)。対談後、中島さんは引き続いて取材、私は仕事場に直帰。締め切りふたつ。

日
1月11日
金曜日

 新年になるなり仕事がせっぱ詰まっているのは、暮れ正月と休みがあったからだろうか。
 来週月曜日からタイにいきます。ほんの数日で、しかも仕事で、バンコクのみだけれど、私にとってタイは初恋の、いつまでたっても嫌いになれない人のようなものなので、タイにいく、というそれだけでうれしくてうれしくて舞い上がる。しかも仕事なので、仕事先の人がきちんとしたホテルを予約してくれている。バンコクはたぶん5度目か6度目で、最後にいったのは7年くらい前だが(去年もいったが、去年は電車に乗る仕事だったので、いったのはホアランポーン駅だけ)、きちんとしたホテルに予約して泊まるなんてはじめてのことだ!(この場合のきちんとしたホテルというのは、ホットシャワーとテレビと空調がある部屋、という意味です。)あまりにうれしくて、このバンコクいきが、今せっぱ詰まっている仕事をさらにせっぱ詰まらせ、帰国後に自身を地獄の釜に突き落とすかもしれなくとも、ま、いっか、と思える。本物の恋ですな。本物の恋というのは、かようにその後のおそろしいことを忘れさせる、それはそれでこわいことなのだ。
 今日は新年会で近場焼き肉。新年会はとびとびで、月末まで続く。あっ、来月にこぼれたものもあるな。6月くらいまで新年会やってたい。締め切り、来週のぶんも含めてみっつ。

1月17日
木曜日

 あーーーーー、ただいま。ただいま。ただいま。帰ってきた。タイから。あーーーーー、夜行便だったので疲れたことである。
 タイはバンコクのみで、昔訪ねた場所を訪ねるという企画。これはいつか野性時代にのります。バンコクは地下鉄も走っていて大都会だった。サイアムスクエアなんて超近未来。飛行場がすさまじく変わったと思っていたら、なんと場所まで変わっていたのだった。でも、やっぱりかわっていないんだよなあ。不思議なことに。バンコクの町を歩きながら、なぜ3日程度で帰らねばならんのか、かなしくなった。
 91年、はじめてタイを旅したとき、一カ月半くらい田舎をまわってきれいなものをたっくさん見て、きれいな気持ちの人たちに会って、そんでバンコクに帰ってきて、バッポンを通りかかったとき、「ここはものすごく邪悪な空気が流れている。私はこの通りに一歩も入りたくない」と突然巫女のように言ってバッポンに入ることを拒んだらしいのだが(そのときともに旅していた人の弁)、今回はそのバッポンにいってみた。偽物とゴーゴーバーがたくさんある観光客向けの通りで、今歩いてみれば、こういう清濁併せのむ感じこそタイだよな、と思うが、昔はきっと若さゆえの潔癖さで満ちあふれていたんだろう(でもそのとき、私はバッポンがどういう通りか知らなかったので、本当に五感からして潔癖だったんだろう)。
 帰りたくないなー、と思いつつ帰ってきたら、成田雪景色。ぎょっとする。寒い。成田から仕事場に直行して、震えつつ仕事。眠いし寒いし。夜は焼き肉を食べにいく。早寝。ああ、バンコクに帰りたい。

1月18日
金曜日

 あまりの気温差のため体調悪し、で、今日入っていた取材と打ち合わせをキャンセルし、鍋食べて寝た。締め切りひとつ。

1月19日
土曜日

 少し回復したので隣町までおでんの具を買いにいった。おでん屋、激混み。並ぶのが異様に嫌いな私は、ふつうならばおでんをあきらめところだが、この冬、土鍋を買ったのにまだおでんを作っていないので辛抱して並んで待った。帰ってきて、煮込みつつ読書。おでんってうまい。私は30歳になるまで「ちくわぶ」を「ちくわブ」だと思っていました。「ブ」ってのは愛称っていうか。ちくわとは違う、あの不思議な触感は何?なぜこれを食べる必要が?と、未だに思います。もちろん私のおでんに「ちくわブ」は入りません。

1月20日
日曜日

 だいぶ回復したので午前中にがんばって走り、夕方、めずらしく鍋ではなくふつうのごはんを作った。鍋以外のごはんがあまりにも久しぶりすぎて、献立のくみたてかたを忘れていたことである。明日からがまた超ハードな日々なので、早く寝っかな、と寝準備をしていたところ、携帯電話に留守電が入っていることに気づく。今日友人のライブがあったのにどうしてこなかったの?今から渋谷で二次会だからこれ聞いて時間あったらおいでねー、という友人からのメッセージを聞き、がひーん、となる。そうかライブ今日だったのか。タイとか寒さとかおでんとかで忘れていたよ。寝間着だし風呂も入ってしまったし歯も磨いてしまったので、渋谷にはいかずに寝る。うーん残念。

1月21日
月曜日

 ライブといえばタイの前にThe Birthdayのライブを友人のマダムKとともに武道館に聴きにいったのである。私、三十五歳を過ぎてから、チケットのとりかたがまーったくわからなくなって、もうすべてのライブというライブを自主的にいくことをあきらめていたのだが、これはマダムKがチケットを予約してくれたのでいけたのである。心が震えるくらいかっこいいライブで、朝の徒歩通勤にThe Birthdayをずっと聴きその日を思い出しているのである。
 午後に家を出、S新聞社にいって取材。その後帝国ホテルにいって打ち合わせ。打ち合わせで会ったIさんが注文の際「メロンナントカ」と頼み(ナントカの部分はフラペチーノだかスムージーだかそんなような)、気持ちが一瞬うわつき、何それ何それ何そのおいしそうなもの!!と思ったが、Iさんは「やっぱアイスティー」と言いなおしてしまい、メロンナントカという、いかにもおいしそうなものを見ることができなかった。
 その後ホテル内で選考会。選考会ののちお弁当。お弁当ののち、地元に戻り、年若いKさんと屋台のような店でひとしきり話す。サワー3杯で「3杯も5杯も10杯も同じ」という酔っぱらい特有の思考回路になった私を、年若いKさん、「明日も早いのだから」と我に返らせてくれる。なので早く帰った。締め切りふたつ。

1月22日
火曜日

 寒い。寒すぎる。先だっての近況欄に婆シャツの登場頻度が落ちていることを書いたが、とんでもなかった。あの時期はまだ冬の本性ではなかったのだ。今、婆シャツ大活躍。足りないくらい。
 昼ごはんのとき読んだ本がおもしろすぎて、食べながら自分が何を食べているのか忘れた。仕事してジム。ジムはあったかくていいなあ(夏は暑いが)。もうそろそろ土鍋を使うのも飽きるころではないかと思いつつ、土鍋で鶏すきをつくる。やっぱ飽きないねえ、土鍋。作るの楽だし。夏でも土鍋を続けようかな。主食土鍋。

1月23日
水曜日

 起きたら雪!雪!!なんかうれしい。寒いけどうれしい。雪のなか歩いて通勤。雪降ると静かだよなあ、町。「かやくごはん」と「たきこみごはん」と「ごもくごはん」っておんなじものだろうか、おんなじものだとしたら「かやくごはん」がいちばんおいしそうに聞こえるな、と思いながら仕事。
 夜になってから都心にいってHさんとお茶。お茶しつつ打ち合わせ。Hさんの助手をしているSさんというお嬢さんが、おみやげに押し寿司をくれた。お昼に鎌倉にいったのだそうだ。
 その後、開高健が好きだったという中華料理屋でYさんIさんとある件を祝いつつ飲む。飲む。飲む。飲む。この三人で飲むのははじめてでちょっと緊張していたが、でもきっと話は合うに違いないと思っていたんだ。実際本当にたのしかった。酔いつつさらに都心部へ(どこだったかまた覚えていない)。そこでさらに飲む。飲む。飲む。時計を見たら十時半で、「なーんだまだ十時半。まだたくさん時間があってよかった」と思って、そのほんのあとに時計を見たら今度は二時半だった。すっごい時間のたちかたである。帰る。寝たの四時。締め切りふたつ。

1月24日
木曜日

 当然のごとく寝坊。徒歩もさぼって電車通勤。ほんで仕事。一日の終わりに、あと二週間のうちにやらねばならないことをぼうーっと考えていたら、時間も何もまったく足りないような気がして、ぞぞーっとして、ぞぞーっののち、ちょっと頭がおかしくなりそうになった。あんまり先のことを考えるべきではないですね。でも考えないと計画もたてられないしなあ。今自宅で読んでいる本が(アーヴィングの新刊)、もうあと少しで終わってしまいそうでこわい。ほかに読む本はたくさんあるんだけれど、終わるのこわい。左手のほうのページが少なくなってくのはかなしい。
 長芋を、焼いて、挽肉の中華炒めをかけてみたところ、これが思いの外おいしく、「長芋って芋のようではないのにやっぱり芋だ!!」と感動した。

1月25日
金曜日

 昼に駅ビルの上のごはん屋でうち合わせごはん。私の頼んだピザが思いの外でかくてたじろぐ。このうち合わせで3月1日、2日とサイン会をすることが決まる。1日は、三省堂書店神保町店と、夕方に三省堂書店成城学園前店とで、2日は、三省堂書店有楽町店。そのうち合わせをしたあと、所用を済ませ仕事をし、あー時間が時間が時間がたりん!と思いつつ、都心のM社へ。えーとこの会社のとある雑誌で私はダイエットをしているのですが(このダイエット企画を引き受けたのには長い長いわけがある)、その写真撮影をし、ちょこっと取材。ダイエットをやったのは生まれてはじめてだが、神戸のお医者さん松本先生が提唱するこのダイエット法は私には合っているようで、運動しても五百グラムも落ちなかった体重がこの三カ月できちんと減ったことである。が、私の最終目標は体重を減らすことではなくてべつのことにあるのである。
 M社から電車で移動し別の都心部にいき、駅から徒歩七分の店に二十分かけても着かず、観念して三人の人に道を訊き(みなさんありがとう)、最後は警察の人にまで訊き、ようやくたどり着く。でもこの迷い時間は計算に入れていたので五分前に着いた。ここでデザイナーの山口さん(「いつも旅のなか」という本の装幀をしてくれた)と、先だって対談でお会いした安西水丸さんとごはん。山口さんと水丸さんは旧知の仲だそうである。水丸さんは真の意味で自由な偉人であった。ほんっとうにたしのい時間で、また気づいたら十二時近かった。二軒目にいった店が、おお、さすが都心、というような店であった。締め切りふたつ。

1月26日
土曜日

 土日は目覚ましをかけないのだが(一応休みなので)、起きたら11時だった。びっくりした。その後、仕事があまりにもたまっているので仕事場にいって仕事。休みと決めた日に仕事をすると気分がめいる。そして土曜に仕事をして思ったことだが、これでは火に油を注ぐようなもの(いや、このたとえ、なんかすごく間違っている。ええと、海の水にバスクリンをいれるようなもの、というようなことを言いたかったのである)。夜、電気店にいき、少し遠くの町にいって焼き肉を食べる。

1月27日
日曜日

 起きたらまた11時でびっくりした。隣町に食材を買いにいってはじめて作るものを作る。この日の献立で長芋は芋だと実感したので、長芋のジャーマンポテトを作ってみたらやはりうまかった。じゃが芋は茹でなければならないが、長芋は炒めるだけでいいので楽だ。明日も起きたら11時だったらこわい、と思い早寝。

1月28日
月曜日

 なんとか平日時間に起きられた。今週中に1月が終わってしまう、とすると、どうあっても仕事がまにあわへん、と気が気ではなくなりつつ仕事をし、昼過ぎ、浜松町にいって朗読録音、その後東銀座に移動して取材を受け、さらにその後霞ヶ関に移動して取材を受ける。私には天変地異くらいの大移動だが、浜松町、東銀座、霞ヶ関、というこの三点はじつはものすごく近い。霞ヶ関の取材が終わったら5時半。このあと、知人ご夫妻のおうちにいくので、銀座三越にワインを買いにいった。私は出不精でくり返し習性があり、ほとんどすべての買い物をいつも決まり切ったデパートでしかしていなくて、だから、ふだんいかないデパートにいくと対応がちがくてびっくりする。このデパートの酒売場は殺伐としていて、レジの人もこわく、異国の冬の朝にひとり立っているような心許ない気分になった。
 知人ご夫妻の家はまさに大豪邸で、人ほどもでかい犬がいてすごかった。初対面の人たちと会い、この人たちが非常にしっかりしているのにずいぶん年下だったのでびっくらこいた。目の玉が飛び出るくらいうまいごはんとデザートを食べて帰った。たのしかった。締め切りひとつ。

1月29日
火曜日

 5時台に起きようと思っても、こう寒いとなかなか起きられない。がばっと起きていた昔は若かったんだなあ、つい三年くらい前だけど。仕事が進んだらジムにいこう、仕事が進んだらジムに……と思いつつ猛然と仕事をするも、進んでもまだ先が途方もなくあり、ジムにはいけなかった。締め切りひとつ。

1月30日
水曜日

 しなければならないことがその瞬間三つくらいあると、フリーズして何もできなくなる、ということが多い。これではいかん、とその三つに着手しはじめると、たとえば消しゴムを元あった場所に戻す、とか、封筒に切手を貼る、とか、縦のものを横にする、とか、そういう微々たることすらできなくなって、私ってどこかおかしいんじゃないかと思う。一日思う。
 午後になってMさんから驚愕のお誘いメールがあり、これは自分の人生がどうかなってしまうのではと不安になるくらいうれしいお誘いで、あわあわと返信し、その後ずっと浮かれ、浮かれすぎて縦のものを横にもできない。嗚呼………。
 十七年くらい前に使っていたが、あまりにも最初の段階でむせたので、そのうち使うのをやめてしまった元祖タイカレーの素(昔はナカヤムゲンドウとかで売ってた)をひさしぶりに使う。やっぱりおいしかった。はじめて作った春菊と蓮根チップスのサラダがすばらしいことになった。こういう、ちーこいこともうれしい。

1月31日
木曜日

 あまりの寒さのため、婆シャツが足りなくなって新たに一枚買う。それにしても婆シャツ、種類がありすぎる。売り文句はひとつでいいと思うんだけど。「特殊な素材であったかい」とか「デザイン重視でそんなにあったかくはない」とか「汗かくくらいあったかい」とか「全体的に引き締めて見せる」とか、何かひとつで。午後S社にいって取材。受付の人なんかこわい。
 その後タクシーで見知らぬ町を目指す。運転手さんも見知らぬ町らしい。近くにいって、メモしてあった主催者の携帯に電話をかけると、「はあーっ!?どちらにおかけですかあーっ」と怒られる。間違ってメモしてきたらしい。夜の町をタクシーでぐるぐるとまわり、目的の民家(レストラン)をさがすも、見つからず、「運転手さん、どうしよう、携帯番号も間違えてメモしちゃったし、一時間も遅刻しているし、私はもう一生そこにつけないかも」と運転手さんに泣きつく。泣きつかれても、運転手さんにもどうすることもできず。この人は親切な人で「じゃあメーター切ってあげるから、番地を頼りにさがそうよ」と言ってくれたが、それじゃあ申し訳ないので、とりあえずタクシーを降り、電信柱の番地を見て歩く。火事場の馬鹿力というのか、わりあいすぐに見つかった。
 古民家を貸し切っての新年会。昔いっしょに取材旅行にいったトメちゃんやコバヤシさん(「いつも旅のなか」に出てくる編集者とカメラマン)と久しぶりに会い、いろんなお祝いごとなどを聞き、おいしいものを食べ、デザートのプリンに悶絶し、帰る。たのしかった。締め切り5つ。ひええ。

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