真冬ですね。午後に仕事場を出て都心にいき、ホテルで対談。お相手はなんと安藤忠雄さん。世界のアンドーに会えるとはなんたることであろうか。安藤さんのお話はほんっとうにおもしろくて腹が痛むほど笑った。気負いがなく、気遣いがあり、自由で、どこまでもおもしろい、すばらしい人であった。私はじつは間接的に安藤さんにたいへんにお世話になっているのだが、その話を打ち明けたことである(この話は今までだれにもしたことがなかったんだけれど、まさか安藤さんご自身に打ち明けられるとはおもわなんだ)。あさってニューヨークにいくんだけど、と、トイレにいくみたいにおっしゃっていたのが印象的だった。
その後、いったことのない町にいき、「きっと目的の店はこっちじゃないだろうなー」と思いながら、しかし方向転換せずに歩く。そしてやっぱり何分歩いても目的地が見えてこないので、カードを売っていた店に入り、すてきなカードを買い、目的地の所在地を告げると、やっぱり反対側ということであった。方向音痴はたいてい正しい方向の逆に自信を持って歩き出すが、私は自分が方向音痴だという自覚があるので、「私が自信を持って歩きそうな道はこっちだが、ならばそれは間違っているからこっちを歩く、でも私が歩いたとたん、目的地は自動的にこっちではないのだろう」と、ややこしい判断で歩くので、よくわからなくなるんだよな。
その目的の店というのが激辛四川料理店で、激辛中毒の会、MさんとKさんと集まる。麻婆豆腐、茄子の蒸し煮、牛の水煮、さらに辛くしてもらった汁なし坦々麺、とテーブルを真っ赤に染め、しかしどれもうまく、ばくばく食らいながらあれこれと話す。私はうっすら汗をかいたがさすがに二人は汗もかかず鼻もすすらず、まるで冷や奴でも食べているみたいにごくふつうに食べ続けている。お店の人が真っ赤なテーブルを見て「そんなに辛いものばかり……だいじょうぶ?」と訊きにきた。この店は辛いがたいへんおいしい辛さであった。締め切りふたつ。
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