アスペクト

つれづれ雑記 角田光代

作家・角田光代さんの日常を綴る日記が、アスペクトONLINEにて連載開始です!怒涛のような締め切りの数々や大好きな肉のこと。見たこと、聞いたこと、会った人、出かけていった旅のこと。角田さんの毎日のつれづれはここでしか、読めません!!

2008年4月1日〜4月30日

4月1日
火曜日

 晴れた。5時前に仕事場を出て日本橋高島屋でインタビューを受ける。その後、一駅戻って目的の場所を目指すが、暗いお堀沿いで迷い、駅から徒歩2分の場所に15分ほどかけて着く。今日は読売新聞読書委員会主催の川村二郎先生を偲ぶ会。なつかしい人にたくさん会えてうれしかった。川村先生がいないことだけがかなしかった。飲んでいて「今何時だろ」と時計を見たら3時をまわっていた。あわてて帰る。風呂に入って歯を磨いていたら、空が明るかった。締め切りひとつ。

4月2日
水曜日

 激二日酔い。大寝坊して9時半に仕事場に着く。酒くさい息で仕事をし、昼、蕎麦の汁が異様に飲みたくなって立ち蕎麦屋にいき、桜海老のかき揚げ蕎麦の汁を飲み干す。
 夕方にようやく平静に戻る。が、なんか舌がへん。煮込みハンバーグ用のトマトソースを作ったところ、ものすごく酸っぱく感じられる。お吸い物も酸っぱく感じられる。ゲラを二個終えたらまたゲラがきた。すごいゲラ攻撃だなー。三浦しをんさんが、ご自身の日記で、ゲラはゲラを呼ぶと書かれていたが、それは真理であるな、と思いつつゲラ読み。あ、今日清志郎さんの誕生日だ。締め切りふたつ。

4月3日
木曜日

 修理に出していた時計をデパートに受け取りにいき、物欲を刺激されつつ地下に向かい、弁当を物色し、迷いに迷って頭がぐるぐるしはじめ、結局中華弁当を買って帰る。仕事場でもそもそと中華弁当を食す。かに玉が、甘くなくておいしかった。夕方、ワインと焼き鳥とお稲荷さんを買い、ものすごい大荷物で東中野にいく。毎年恒例の、川沿いのゴミ捨て場での花見宴会。東中野にものすっごい高いマンションと、ゴールドジムが入ったショッピングモールができていてびっくり。今年は去年よりたくさんの人がいた。30人くらい?風が吹くと、桜が雪のように舞って、それがすごい景色だった。途中、公衆トイレにいったら、どういうことなのかまったく理由がわからないが、便器の真横に大便がしてあった。ほんの数センチずらせば便器におさまるのに、いったいなぜわざわざ便器外に?
 9時ごろ飲み屋さんに移動して飲む。飲み続ける人たちを残して帰る。終電だった。締め切りひとつ。

4月4日
金曜日

  今日、べつのお花見のお誘いを受け、私は何かを大きく勘違いして、昨日が今日だと思い、重なってしまっていけないや、と欠席の返事を出したのだが、あ、別の日だったと気づき、お花見、いきたいなーと思いつつ仕事をするも、二日酔いでぐらんぐらんするので、やっぱりいかなかった。ぐらんぐらんしたまま帰る。へなちょこ。

4月5日
土曜日

 朝早く起きて走り、昼前に家を出て銀座へ。ずーっと観たかったコーエン兄弟の映画を観る。私、自分では気づかなかったが、この兄弟の映画が、じつはものすごく好きなようだ。ノーカントリーは先月飛行機で二回観たのだが、英語とフランス語しかなくて、今ひとつわからなかったので、日本語字幕をちゃんと観たかった。そしてやっぱりコーエン兄弟はすばらしかった。すばらしい、すばらしいと思いつつ銀座を歩き、肉を食って帰る。

4月6日
日曜日

 東海林さだお先生の本を読んでいたら、しめ鯖についての記述があり、猛然としめ鯖が食べたくなって、午前中のうちに隣町に鯖を買いにいく。鯖、安かった。なかなかうまくできた。

4月7日
月曜日

 昼に年若いKさんとランチ。彼女の明日の誕生日を控えめに祝う。ところで、どうでもいい話なんだけれど、私の生まれるはずだった日は4月8日だった。ちょうど一カ月早く出てきたのである。予定日通り4月8日に生まれていたら、一学年下になったのだなーと思うと、なかなかに感慨深い。
 びしびしと仕事をし、ジムへもいき、5時に仕事を終え、キングサーモンを買って帰る。夕飯後、気づいたら床でいぎたなく眠っていた。アーモンドとピーナッツの違いを、きちんと考えたことがなかったのだが、じつに違うものであると、この年になって知る。いかなるときも高カロリーを好む私はピーナッツがより好きだったが、アーモンドもおいしいね。

4月8日
火曜日

 朝、ざんざん降りなので徒歩はやめて電車通勤。午後になって風も強くなる。やみそうでやまない。午後、都心までいって仕事を二個する。そのまま地元に帰ってきて、友人たちと焼き肉。はじめていく焼き肉屋だったが、激うまだった。とくに、ハラミが。その後カラオケ。この顔ぶれではよく飲むが、たいていいつも私の仕事場で飲んでいるので、外で会ってみんななんとなく照れくさそうであった。でも酔うにしたがって照れも消えるようであった。私もそうであった。

4月9日
水曜日

 晴れてうれしい。香港で買ったラー油がたいへんにおいしく、これを使いたいがために、夜に餃子を作る。水を入れすぎて焼きを失敗したが、でも、茄子の餃子がうまかった。餃子の焼きは奥が深い。サイコロ状に切った茄子(塩ふって少し置いて絞る)と、豚バラの刻んだのと、葱というシンプルな具なのに、とろーっとしておいしい。

4月10日
木曜日

 雨で寒い。なんとなく、6年ぶりくらいに、仕事の感じにちょっと時間的余裕ができた。でももしかしたら、錯覚かも。午後、ジムにいき、黙々と練習をし、買い物してタイカレーを作る。パクチーのサラダも作る。今日朝早くから、中央線が止まっていたことを知る。徒歩出勤だから知らなかったのだ。夕刊には、線路を歩くたくさんの人の写真が載っていて、ちょっとぞっとした。晴れならばまだしも、こんな雨の日に、ごろごろした石ばっかりの線路を歩くのは、さぞやしんどかったろう。あーもう、電車の止まらない路線の町に引っ越してやる!と決意した人が、何人かいるのではなかろうか。中央線はしょっちゅう止まるからなあ。締め切りひとつ。

4月11日
金曜日

 4月なのに寒いなあ。午後に仕事場を出て赤坂のホテルにいき、打ち合わせ一件、その後、ホテル内で迷子になりつつ、なんとか目的地に着き、選考会。難航しつつも無事に終わる。

4月12日
土曜日

 夕方走ろうと思いつつ、ジャージで過ごし、ジャージで過ごすことが新鮮だと思う。が、夕方になって所用を思い出し、走るのを断念、ジャージも着替える。
 夜、近隣のイタリア料理屋にはじめていったらば、すごく感じのいい店で、食べものはおいしく、その食べものを圧倒するくらいパンがおいしく、幸福な気持ちになる。近隣の町だがめったにこないところなので、歩くのがたのしかった。

4月13日
日曜日

 某誌でやっているダイエットは今月末までだが、雑誌の関係で、今日が最後の撮影。神戸の松本先生とも久しぶりに会う。先生の設定した体重には届かず(あとちょっとなんだけど)とも、けっこうがんばったと思う。私は今回、ローライズのジーンズというものは、出っ張った腹をのせるためにローライズになっているわけではないと理解したことである。
 少し前に知人のMさんが仕事でフランスにいき、おみやげに缶詰めフォアグラをくれたので、今日はそれを使おうと思い、フォアグラパイ包みという大仰な料理に挑戦したところ、非常にかんたんで、しかも「ぎょわっ」と思うほどおいしかった。包むフォアグラは、バルサミコのソースなんて作らずに、ただ塩・胡椒のみのほうがおいしいと思った。

4月14日
月曜日

 ホワイトデイってもう一カ月も前だったのねえ。さらにいうならバレンタインデイってもう二カ月も前だったのねえ。それにしても雨ばっか。徒歩通勤途中にある、ぼったりした八重桜が今満開。でも雨。
 夕方、仕事を終え、近隣の町へ。年若い女の子二人とごはんを食べる。自分がこの若い娘さんたちよりひとまわり以上も年をくっていることを忘れて、私も年若い気分で話しこむ。ごはん後、こないだ通りかかって雰囲気がいいと思ったバーにいって少しだけ飲んだ。気づいたら猛烈にポテト食べてた。なんか、醤油とバターの味がしておいしかったの。日付がかわらないうちに帰る。

4月15日
火曜日

 昼、激辛カレー弁当を買いにいったら、店内で飲食していた人がものすごい剣幕で店員を怒鳴りつけていた。店には、その怒鳴っている人と、店員と、私しかおらず、店員は私の接客をしているので、怒鳴る人はこちらに顔を向けて怒鳴る格好になり、私までもが怒られている気分で、びくーっ、びくーっと三回くらい飛び上がった。こわかった。昼日中のカレー屋でいったい何をそんなに怒るような事件があったのか。十倍の辛さを頼んだのにふつうだったのかな。それだってそんなに怒らないよな。
 夜、また気づいたら夕食後にいぎたなく眠りこけていた。早く寝た。締め切りふたつ。

4月16日
水曜日

 夕方、赤坂にいって新しい仕事の打ち合わせ。終了後、次の待ち合わせまで時間が余ったので、赤坂見附の駅ビルのようなところに入ったら、すごく不思議な雰囲気のビルだった。旅行しているみたいな錯覚を抱かせるビル、っていうのか。
 六時過ぎに駅近くの中華屋さんで、S社の方五人とごはん。中国語を操って香港の町を生き生きと闊歩していた担当のIさんが異動になって、引き継ぎ。新しく担当になってくださったTさんは、でももうずーっと前からいっしょにディープに飲んでいるので、はじめましてというわけでもない。そしてこの中華屋のごはん、びっくりするくらいおいしいでやんの。中華っていうか中国料理ってたいていメニュウ見れば味とかありようとかが想像できるんだけれど、この店のはすべての料理が想像とかけ離れていて、しかも今まで食べたことのない味のものばかり。びっくらこいた。ギャートルズに出てくるような、馬鹿でかい骨付き羊肉があって、これが、羊好きをむせび泣かせるほどのうまさであった。美人のSさんが、無言で、顔よりでかい骨肉を囓っていたのが、たいへんにいい光景であった。そしてこの日、私は人生二度目のすっぽんを食べた。このすっぽんは鍋になっていなくて、不思議なおいしい料理だった。人生初のすっぽんはIさんといっしょで、二度目もIさんといっしょだから、この先もきっとIさんとともにすっぽん回数を増やしていくのであろうかと考えた。家が近所のKさんとともに焼き肉の話などしつつ帰る。締め切りふたつ。

4月17日
木曜日

 昼過ぎにまた雨。雨、多いなあ。ばたばたと仕事をしながら髪を切りにいき、ジムにいったら休館日で、おやおやおやおや、と戻ってきて仕事。鯖が食べたくて魚屋に向かうが、いつもの魚屋が休みで、おやおやおやおや、と家のそばの魚屋にいく。ここで食べたいような鯖がなく、スズキにした。善。それで今日、私は新じゃがが好きである、としみじみおもったことである。まるくてかわいいしねえ。

4月18日
金曜日

 ごくふつうに仕事をして一日が終わる。豚バラかたまりを茹でて作る回鍋肉に挑戦する。肉ががつんとした回鍋肉である。締め切りふたつ。

4月19日
土曜日

 朝起きて走り、公園に、犬連れのMさんがいないかなーと思ってきょろきょろするも(先だってこの公園が散歩道と聞いたのだ)、会えず。犬、さわりたいなあ。夜に近所の寿司屋にいく。気が遠くなるほどうまかった。おいしすぎて耳の奥がきーんとなる。

4月20日
日曜日

 今日もがんばって走ってみる。2日も続けて走ったら膝が悪くなるのでは、と心配するが、心配するほど走っていないのだ。こういうのを杞憂というのだろう。いわしを焼いたら部屋じゅうが青魚のにおいになった。明日から仕事だなあ、と思いつつサザエを見る。その後の記憶がない(たぶん眠かったのだ)。気づいたら就寝時間だった。

4月21日
月曜日

 ゴールデンウィークが近づき、その休みのかたまりは私にはちーとも関係ないのだが、しかし、何かそわそわするなー。午後、取材一件。40代になって思うこと、というような取材で、「ナビィの恋」の中江監督と、浜崎貴司さんが仕事場にいらして、たいへん緊張する。が、同世代だからか、話が本当におもしろく、共感でき、また刺激的でもあり、酒をいれて延々話したくなったことである。ちょっと感動もした。浜崎さん、ロックだった。その後、新宿にいき、取材と打ち合わせ。
 打ち合わせのあとは西新宿のホテルで、R18文学賞授賞式。去年から会場がかわり、私は去年欠席だったので今回はじめての新会場で、ものすごく豪華になっていてびっくりした。トイレもすごい。摩天楼の真ん中に落ちそう。この賞は7回目だが、前は、いらしてくださる方も少なく、雨の日なんかがらーんとしていて、小劇場みたいにお客さん待ちで開始を遅らせたりして、ううむ、と思っていたが、歴代受賞者の方々の華々しい活躍によって、今やものすごくたくさんの人が集まってくれて、本当にうれしい。
 二次会のバーが、大学生のとき私が想像した「もてる女と金持ちの男はこういうとこで酒飲むんだべや」という、そのまんまのような夜景バーであった。その夜景バーに40歳を過ぎて団体でいって酔っぱらっている私。家が近所のKさんとともに帰る。あれっ、先週もいっしょに帰った気が。

4月22日
火曜日

 毎月、一カ月が過ぎるのが早く、5日くらいしかないように思えるが、4月はなんだか過ぎるのがゆっくりでうれしい。天気が悪い日が続いているからそう思うのかな。ところでB社にたいへんお洒落なSくんという若者がいて、私はこの人の洋服をじろじろ見るのが大好きなのである。昨日のパーティにSくんもいらしていたので、また、じろじろじろじろ見てしまった。ただ見るだけでなく、右手で彼をつかまえ、左手でどのような成り立ちの格好なのかめくったり広げたり持ち上げたりして見るから(だってとても複雑なのだ)、端から見たらこれは立派なセクハラであろう。と、そんなことを考えつつ徒歩出勤をする。それにしてもSくんの着ていたワンピースはかわいかったな。仕事をし、刺身を大量に買って帰り、刺身定食。なーんか食べたかったんだ刺身定食。善、ですな。

4月23日
水曜日

 午前中に仕事場を出て、乃木坂の美術館にいき、モディリアーニ展を見る(仕事のため)。混んでいても絵の見やすい造りの美術館だった。晴れていて、夏のような陽気で、気持ちよかったなあ。その後、銀座に移動し、老舗の料理屋さんでごはんを食べながらの対談。対談のお相手は、将棋棋士の先崎学さん。テーマはボクシングジムのことだったのだが、なんと先崎さんと私はおんなじジムに通っているのだった。ぜんぜん知らなかった。先崎さんの話がたいへんおもしろくて、何を食べているんだかわからないままあっというまの二時間だった。将棋の試合ってすさまじいのだなあ、と思った。それなのにぜんぜん気負っていない先崎さんは偉大だと思う。
 さらにその後、浜松町にいき、またホームの反対側で降り、ホームを延々歩いて文化放送へ。もういい加減、前か後ろか覚えたい。録音後ダッシュで帰ったところ、ダッシュで帰ってくるのを予感していたようにゲラが待ちかまえていて、ずわーっとゲラをなおして送信、帰宅。ピーマンの肉詰め作ったら、なんかなつかしい気分になった。ピーマンの肉詰めって、実家でよく出されるメニュウではないですか?

4月24日
木曜日

 午後に女性誌が来訪、シャンパンの取材。私シャンパン好きなんだ、じつは。詳しくないけれども。味もよくわかんないけれども(三千円のシャンパンと、三万円のシャンパンの味がおんなじに思え、シャンパンマスターR氏を失望させたことがある)。
 夕方仕事場を出て都心へ。今日は数カ月に一度ある同業者女だけの会。先週いって大感動した中華屋さんに、またいきたかったので、そこに集まった。今回もやっぱり意外な感じにおいしかったのだが、気がつけば、テーブルぜんぶ揚げもの状態。「こないだ食べておいしかったもの」を私が頼むとこんだけ油まみれになるのだな。私ですらさっぱりしたものが食べたくなったことである。しかしもりもり食べ、がぶがぶと飲み、わさわさと話し、本当に楽しかった。私以外の三人は、みんな華奢なのに、ほんっとうによく食べよく飲み、ほれぼれするのだ、毎回。店を出て、さらに都心部にあるバーにいって、男子と合流して飲む。日付がかわってすぐ帰る。あまりに楽しかったので、記憶をなくさないように気をつけて帰った。

4月25日
金曜日

 5時に仕事を終え、呼んでいただいた試写会を観にいく。客席に知っている人がたくさんいてびっくりした。でもそうだった、この映画の原作は角川書店の本なのだった。(観た試写は「ぐーぐーだって猫である」。)映画、すんごくおもしろかった。人でも犬でも猫でも、近しい生きものをなくした経験のある人は、呼吸困難になるくらい泣いてしまうかも。いや、私は、かつて引き取って二年くらいいっしょにすごしただけの、今は亡き鳥二羽のことを思い出して、「ごふ、ごふ」という声を出して泣きそうになったことである。隣に、タイにいっしょにいったK書店のDっちが座っていたので、必死にこらえたんだけれども(隣の人が「ごふ、ごふ」と泣き出したらこわいわな)。それでもかなしい映画でなくて、救われたような気持ちになる映画だった。そんで主演の小泉さんが、もうほんものの猫みたいでびっくりした(猫の役じゃないんだけど、猫化してる)。すごかった。ダッシュで帰る。

4月26日
土曜日

 朝走る。この季節は気持ちがいい(走るのは相変わらずしんどいが)。昼に、前々からいきたかった、激辛麺のあるお店にいく。ここの、北極と名づけられた麺が、私の激辛舌をじつに満足させてくれる辛さで、心からうれしかった。こんなにきちんと辛くておいしいものは、めったにないのだ。その後、買いものをし、町を歩き、夕方になっても激辛麺のうれしい衝撃のせいか腹が減らず、目覚めたときは焼き肉食べたかったんだけど、焼鳥にした。カウンターしかないちいさな店で、はじめて入ったんだけれど、おいしかった。焼鳥屋さんで焼鳥を食べるのは、八年ぶりくらいである。ひとりで入ってきた推定八十代のおじいさんが、だれかれかまわずに話しかけたそうな雰囲気に、「おお、焼鳥屋はこうであった!」となつかしい気持ちになった。

4月27日
日曜日

 曇りだったのが、だんだん晴れに。注文しておいた北海道のアスパラが届き、夜、大量に茹でる。北海道のアスパラって、もうどうしたの?どうしたいの?どうすんの?っていうくらい、うんまいよな。うますぎて、サザエに集中できないほどであった。

4月28日
月曜日

 どうも、世のなかはゴールデンウィークに突入したようである。ゴールデンウィーク突入日というのは、29日ではなくて、29日がある週の最初の日のことを言うのかいな。
 今日は昨日のアスパラをグリルで焼いて食べた。これはもう、アスパラのかたちをしたとうもろこしですな。しかしとうもろこしより微妙においしいのでやっぱりアスパラですな。ゲラをやろうと思っていたのに、仕事場に忘れ(たぶん無意識にわざと忘れたんだと思う)、ゲームをやりまくる。

4月29日
火曜日

 商店街に日の丸の旗がかかって休日気分。私はごくふつうに仕事。休日気分のため、たいへんに気が散る。午後、ジムにいって運動したら、もんのすごい汗。今日は暑いものな。ジムで、先だって対談させていただいた先崎さんに会う。本当にいっしょのジムだったんだなあ。
 夜に、「これじゃ足りないか」というくらいのペンネを茹でたら、いったい何人前だ、と疑いたくなるほどの量が茹で上がった。茹でると増えること、すぐ忘れるよ。今日こそは忘れずにゲラを持ち帰り、ゲームをせずにゲラゲラ。

4月30日
水曜日

 ようやっと寒くなくなった。午後、ジムにいったところ、なんとランニングマシンの横一列に物書きが私を含め3人。しかも走ってるのこの3人だけ。なんつーか、すごい図だな。
 夜は肉の会。苦手な渋谷だが、肉の会ならばがんばって馳せ参じるのである。
 肉の会でいくのはぜんぶあたらしい店だが(肉部長がさがしてくれる)、どこもかしこもうまく、この店もたいへんにおいしかったので、世のなかにまずい焼き肉屋ってあんのか?と疑問に思う。その後、たまにいくバーにみんなでいって、飲む飲む飲む飲む。12時過ぎに、Kさんがもんのすごく興味深い話題を持ち出し、ああ私そういう話って大好き!と興奮したところまで覚えているのだが、その興味深い話題がなんであったのか、その場にいながら忘れてしまった。もったいないことである。英語のうまいスペイン人に、Eさんと二人で知っているスペイン語を言い合ったことは覚えているんだけど(セルベッサポルファボーレとかね)。
 帰って風呂から出たら空が明るかった。まあいいよね、ゴールデンウィークだし。
 締め切りいつつ。最近締め切り少ないような気がする、でもこれがふつうだよな、と思っていたら4月末にこんなにたまっていたのであった。

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